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【ブログ小説】おすすめの青春書き下ろし!うたかたの夢(第二話)

まろはだいまろ。思い出は頭の中に、想い出は心の中に。いつでも取り出せるようにしていても、取り出した試しがない。そうであれば、文字に起こそう。記事に残そう。振り返っても何も悪くない。立ち止まっても誰も咎めない。淡い追憶をその手でしっかりと。

大学生の時分、面白くもないごく平凡な日常に絶望し、本気で音楽で大成しようと考えた浅はかな青春をほぼノンフィクションで描きます。夢とは一体なんなのか?叶えるだけが夢?いや、ひと時だけ見た希望も立派な夢なんだと強く思います。そんな迷走した大学生の一つの「夢」を感じてみて下さい。

 

第二話:前編

「久々やな!元気やった?」

阪急梅田駅のビッグマン前は、今も昔も変わらぬ定番の待合せ場所だ。久しぶりの再会ということもあり、予定時刻より早くタカと落ち合った。ラフな着こなしにジオメトリックなストールで引き締められたコーディネート。彼のやる気が伺える。今日の主旨は彼も十分に理解しているはずだが、浮足立っていた。そういえば、彼とのこんなセッティングは高校時代ぶりか。無理もない。

「おまえ本当に音楽で食ってく気?まぁ、サラリーマンになるとも思えないけどな。」

咥えタバコの煙が染みるのか、タカは目を細めて左唇でそうつぶやく。

「まぁ、今日次第よな。本当にしっくりくるパートナーに出会えれば。無理ならマグロ漁船にでも乗るか。」

「おまえがそれ言ったら冗談に聞こえんから・・・。」

そう様々な経緯を辿り、ぼくは船乗り育成の大学に行っていた。一体何を学びに来たのか。困ったボンクラ学生である。そうこうしていると、約束の時間になりマアからの着信。定刻通りに4人が集まり、彼女が姿を現した。

 

スズ

21歳

大阪府在住

美容専門学生

 

背丈は150cmくらいだろうか。黒髪のショートカットに、個性的なナチュラルメイク。マントのようなトップスを身にまとい、何とも言えない雰囲気を漂わせていた。明らかに普通ではない。さすがはマアの友人。人見知りなのか、軽く会釈しただけで目を合せようともしない。

「とりあえず、店入ろうかぁ。」

そう切り出したタカは、ぼくに目配せをして先頭に立った。この出会いが後の大学生活を一転させることになるとは、この時のぼくは知る由もなかった。

 

梅田界隈はとにかく人が多い。土曜日ともなれば、酒に酔う前に人に酔うほどだ。そんな中、とある居酒屋で粛々と合コンならぬ懇親会は続く。お酒のペースが上がるにつれ、スズのステータスが徐々に明らかになっていった。基本情報をまとめるとこうだ。

 

  • 四国出身で親の反対を押し切って、大阪の美容専門学校。
  • この騒ぎをきっかけに親が離婚。
  • 反対を押し切ったからには、美容師になれと義務付けられていた。
  • 本当は唄を歌いたい。でも、世界観が独特過ぎて半ば挫折。
  • 絶望寸前で目が死んでいた。

 

伏目がちだったのは人見知りだけのせいではない。絶望寸前だったのだ。そのくすんだ灰色の瞳は、まるで自分を覗き込むようであった。当時は、空前のカラオケブームであった。どこ行く?の会話の次には、みな自然とカラオケ屋へ足が向かっていた。老若男女、みんなマイクを握ったものだ。

「ダイ、スズの歌も聞きたいやろ?カラオケ行こうや!」

例に漏れず、この日もマアの提案で二次会はカラオケだ。確かに音楽パートナーを互いに模索するうえでは、うってつけの場所だった。マアの十八番、globeの”Anytime Smoking Cigarette”から始まり、ぼくも誰も知らないようなマニアックな洋楽を披露した。なぜか必死に耳を傾けてくれたスズの眼差しを、ぼくは今でもはっきりと覚えている。そして、ようやくスズの出番。彼女もまた、聞いたことのないマニアックな邦楽を歌い始めた。

「えっ?なに??」

それは曲名が分からないというクエッションではない。ぼくが夢にまで見た理想の声色に対するクエッションであった。本当に理想は現実にあったんだ!あったんだよね?というクエッション。そんなクエッションを反芻しつつ、ぼくはただただモニターを見つめていた。

 

帰りはマアと一緒だった。にやけながらスズの印象を尋ねてくる。

「あんた正直、気に入ったやろ?あの子もあんたの声に反応しとったで。番号教えてあげる。だから、タカの番号教えてや!」

まったく分かりやすい奴め。それにしてもスズの声が頭から離れない。ぼくは家に帰り、ギターの埃を払いのけチューニングに没頭した。

 

 

 

第二話:後編

「一度、ダイの曲を聞いてみたい。」

それはスズ、彼女からの誘いであった。すっかりチューニングを終えたギターを車に乗せ、阪神芦屋駅まで迎えに行った。もう9月も半ばを過ぎ、夜などはそれなりに冷え込んでいたが、彼女を乗せたセドリックは、山側のとある公園を目指していた。今ならいくら金を積まれてもやらないであろう。気付けばぼくは、恥じらいもなくその公園のベンチで、オリジナル3曲を弾き語りで披露していた。その後、お互いの音楽観や将来のベクトルなどについて語り合い、車に戻ろうとしたその時。彼女の口からそれは出た。

「ダイの音楽を一緒にやりたい。それがあたしの答えやわ。」

断る理由が見当たらない。彼女は奇跡的にぼくの音楽観を無理なく受入れ、晴れて一緒に活動していくことになったのである。

それからというもの、週3回は練習し、残りの時間も作曲等の音楽活動に没頭した。ゆくゆくは彼女にもキーボードをお願いするつもりだったが、この時点では女性ボーカルのみに特化。まずはツインボーカルの確立を急いだわけである。不思議なもので多忙にもかかわらず、生活に張りが生まれた。いや、やりたいことで満たされる日々を、人は多忙ではなく幸福と呼ぶのかもしれない。

そして、すっかり秋が深まる11月ごろ、ぼくらはライブを意識するようになっていた。ただ、それにはあと1人メンバーが必要だ。そんな時、とある1人の名前が頭に浮かんだ。

 

ゴウ

21歳

神戸市在住

同大学の同級生

 

彼はぼくの大学の同級生で、これまでほぼ面識はなかったのだが、マイペースに1人で音楽をしていると聞いたことがあった。早速、久しぶりに大学へ出向き彼に声を掛ける。

「なぁなぁ、急にごめん。確か音楽してるんよな?オレもやってるんやけど、ちょっと話を聞いてくれん?」

「うん、いいよ。ぼくもちょうど今、音楽に力入れたいと思っていたところだから。」

彼は穏やかな口調でそう返した。思っていた以上にマイペースで、物腰の柔らかい青年であった。ただ、見たこともない銘柄の、見るからにキツそうなタバコを常にふかしていた。このギャップが何とも心地よく、ぼくの心に優しく刺さった。その後、何度かに分けてぼくの音楽観、そしてスズとの活動状況とそれに至った経緯を説明した。

「いいね!ぼくで良ければやらせてもらうよ。」

結果、快諾であった。こうして3人で活動していくことになり、ユニット名「drop」が始動した。この名前は珍しくスズが提案してきたものだ。3人それぞれが個性的で色が違う。まるで、サクマ式ドロップスみたいだね。・・・が由来だそうだ。今思えば、スズの世界観が最も異色であったと言わざるを得ない。ただ、それが良かったし必要であった。ゴウはピアノ、ベース、ドラムまでこなすマルチプレーヤーだった。曲によって楽器を持ち替えたが、主としてピアノを担当していた。3人での活動が盛り上がり、楽曲の完成度も高まってきた。そして12月。いよいよ、初ライブを迎えることになったのだった。

★だいまろ★
★だいまろ★
とうとうdropが始動!初ライブが迫る師走の刻!
見事成功させ、年越しを迎えることができるのか?
そして、ここから物語性が一気に増してくゾ!

 

・・・次回へ続く!

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【ブログ小説】おすすめの青春書き下ろし!うたかたの夢(第一話)

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