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【ブログ小説】おすすめの青春書き下ろし!うたかたの夢(第一話)

まろはだいまろ。思い出は頭の中に、想い出は心の中に。いつでも取り出せるようにしていても、取り出した試しがない。そうであれば、文字に起こそう。記事に残そう。振り返っても何も悪くない。立ち止まっても誰も咎めない。淡い追憶をその手でしっかりと。

大学生の時分、面白くもないごく平凡な日常に絶望し、本気で音楽で大成しようと考えた浅はかな青春をほぼノンフィクションで描きます。夢とは一体なんなのか?叶えるだけが夢?いや、ひと時だけ見た希望も立派な夢なんだと強く思います。そんな迷走した大学生の一つの「夢」を感じてみて下さい。

 

第一話:前編

将来、ネクタイを締めるつもりは毛頭なかった。結果的には、大学院を経て一部上場企業のサラリーマンへ。後悔してるかって?いや、そんなこともない。理想とか夢とか、将来の漠然とした偶像と心地よく決別できたから。タイミングよくけじめをつけたから。これはそんな淡い追想の物語である。

2003年7月、梅雨も明けて夏休みを目前にした大学1回生。神戸市内は、なぜか街中でもセミが鳴き始めるのが早い。そして異常に数も多い印象だ。例に漏れず、すっかりクマゼミの大合唱が始まっていた。そんな中、ケータイ片手にぼくはメンバーを探していた。バンドというよりユニット、いやプロジェクト?要するにぼくのやりたい音楽に付き合ってくれる仲間だ。そんな都合のいい相手はなかなかいない。

高校生の頃からバンドはしていて、ボーカル&ギター担当だった。洋楽中心で90年代のオルタナティブロックや、シューゲイズなどマイナーな路線。でも、個人的にやりたい音楽ではなかった。ぼくが当時目指したものは、男女ツインボーカルのゆるいアンビエントミュージックだった。形容がひどく難しいが、「牧歌的な子守唄」とでも称すか。要はもっとマイナー路線かつ、アンダーグラウンドな音楽で食っていこうと思っていたからタチが悪い。頭では商業音楽でなきゃと分かっていても、やりたいことは曲げられない。若さゆえの抗いか。

ただ、こんなナルシズムな音楽に付き合ってくれる女性が周りにいるわけがなかった。そこで、当時流行っていたメル友サイト「スタービーチ」で藁をもすがる思いで探し続けていたのである。どうしても、ぼくの音楽には女性ボーカリストが必要だ。主張しすぎない中性的な声色で、楽器が何かできればなお良し。おまけに黒髪の小柄な子で、ミステリアスな雰囲気がほしい。今思えばどこまで傲慢か。すっかり、頭の中にキャラクターが出来上がっていた。妄想癖に近い。

来る日も来る日も探し続けた。今年の夏休みからは活動を始めたかった。売れるまでの下積み期間を考えても、もうスタートを切る頃だ。頭でっかちなコンセプトだけが先行し、ぼくを焦燥させた。そんな9月のある日。興味があるので話がしたいと1人の女性から連絡があった。

マア

20歳

神戸市在住

古着ショップ店員

基本情報をメールでやり取りし、阪神沿線の喫茶店で会うことにした。きっと今はもう、跡形もないはずだ。

「どうも〜、ダイくん?」

「…おっ、おう!よろしくなあ。」

衝撃的だった。金、いや黄色の髪に鮮やかなカラコン。ド派手なピアスに10人分くらいのアクセの量。サイケデリックな服に木靴。いや、どう表現すべきか。もう死語だろうが、アメ村系の古カジの強め。カジカジのストリートスナップに毎回載ってそうなイメージ。すごいインパクトだが、この路線ではかなりオシャレであった。見た目に圧倒はされたものの、話すとしっかり者で波長も合った。彼女はバンドでボーカル志望。当時流行っていたシャカラビッツがイメージしやすいか。ぼくの理想とはかけ離れていたが、お互いの音楽観を知るためにカラオケへ。

「あたし、めっちゃカラオケいくねん。」

そう微笑む彼女は、自信に満ち溢れていた。そして、その自信に間違いはなかった。マイクを握らせると、彼女のオンステージ。パンチの効いたハイトーンボイス、さらには声量が素晴らしかった。

「ダイくんも、ええ感じやん。」

ありがたい社交辞令も受けつつ、お互い好感触で終わった。でも、何かが違う。その後、定期的にカラオケに行ったり、音楽観を語ったり、ぼくの音楽を聴かせたり。しかし、一緒に活動することはなかった。ぼくが誘えば断らなかったかもしれない。現にやってみたいとの示唆もあった。でも、間違いなく音楽観にズレがあった。初めは楽しく新鮮でいいが、突き詰めていくと歪みになり、やがて崩れることが目に見えていた。恋愛と似ている部分があるのかもしれない。ぼくはそっと携帯電話を手に取り、スタービーチにログインした。

 

 

第一話:後編

普通という言葉が大嫌いだった。今でこそ、その普通というものこそ尊く、手にするのも難しい代物だと理解している。ただ、当時は何か枠に収まって、敷設されたレールに乗っかるイメージ。そして、そうはならないだろうという全く根拠のない自信があった。きっと、自分には特別なレールが用意され、運命とやらが導いてくれるとでも思っていたのか。そもそも、レールは自らが敷いていくもの。とんだ勘違いをしていたようだ。案の定、その後も音楽パートナーは見つかることなく、ただただ時間だけが過ぎていった。作曲活動だけは熱心であったが、曲を書き溜めたところでアウトプットできない。次第に楽しいはずの音楽が苦痛に形を変えていた。

そして、大学2回生の夏ごろには、もうギターに埃がかぶっていた。気の合う仲間とただただ過ごす日々。楽しいが何かスッキリせず、馬鹿騒ぎの裏側でうつむいていたような。梅雨はなかなか明けなかった。

「ちゃんと、音楽してる?」

久しぶりにマアからの連絡。音楽パートナーにはならなかったわけだが、何かとお互いの近況が気になってケータイを手に取る。softbank?いや、ようやくJ-phoneからvodafoneに移り変わった頃だ。

「絶対、何もしてへんやろ!分かんねやで、遊んでばっかおらんとちゃんとしぃやぁ!」

どうも、この子にはバレているらしい。呼び出しを受け、襟を正して一直線。駅前の喫茶店。珈琲をすすりながらカラコンとか云う青い瞳がぼくを覗く。

「で?どうする気?音楽ちゃんとやる気あんの?もうハッキリする時期やろ。大学にまで行って

相変わらずの超個性的ファッションに、大阪寄りの関西弁。しかし、その言葉は的のど真ん中を射抜き、ぼくの心にずっしりのし掛かった。マルメンライトのピッチが自然とあがり、灰皿に整然と吸殻が並んでいた。

そんなことは分かっている。マジメな面々は、もう既に就活があーだのこーだの騒ぎ立てている時期だ。ぼくだって、ちょっとくらいは将来を考えるさ。片目で薄目をあけて、ちょっと前を見てみるさ。大丈夫!ぼくには特別なレールが、あれ?一歩先には道はなかった。そして振り返れば退路さえなかったのだ。それでもやはり、ネクタイを締めるつもりはなかった。空になったマルメンライトのケースを握りつぶし、マアに一言。

「やる気はある。誰かほんまにおらんかな?」

「ほんまゆうてる?ほんならどうか分からんけど、一回会ってみる?」

おいおい!思い当たる節があるのか。大学生らしく合コンスタイルでセッティングしてもらうことに。

「じゃあ、2×2な。ちゃんと男前連れてきてや。」

ったく。幸いぼくの周りにはイケメンとやらが多かった。どうせならベーシストにしよう。

タカ

21(同い歳)

大阪府在住

大学生

彼はぼくの高校の同級生で、元バンド仲間でもあった。大学進学後に音楽活動こそなかったが、気の合う友人だ。

「で?そっちはどんな子なん?ちゃんとオレの音楽観を分かってくれそう?」

「うーん、どうやろな。あんたもその子も変わり者やから、合うか合わんかハッキリすると思うわ。」

別に彼女を探しているわけではない。そして、彼女を探すより難しい事は承知の上。あまり期待せず楽にいこう。その日は9月の終わり、少し肌寒い土曜日だった。長い梅雨もさすがにすっかり明けていた。

★だいまろ★
★だいまろ★
次回予告!!「第二話」
ひょんとした流れから候補者が浮上!
果たしてこんなマニアックな音楽と世界観に
同調してくれる仔など存在するのか?!

・・・次回へ続く!! 

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【ブログ小説】おすすめの青春書き下ろし!うたかたの夢(第二話)

 

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